北海道立釧路芸術館

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ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❸


【 ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❸ 】

今回は、サハリンに暮らしてきたサハリンアイヌ、ウイルタ、ニブフの作品をご紹介します。



サハリンアイヌでは、戦後北海道へ移住し、アイヌ文化の継承にも尽力した口承文芸伝承者の藤山ハルさんと、長女の金谷フサさんが制作した刺繍付きの衣服を中心に、帯、はちまき、そして大きなガラスビーズを使用した首飾りを展示しています。



渦巻き、曲線や星のようなかたちを連続させていった文様は、前々回ご紹介した北海道アイヌの刺繍と通じるところがあります。また、より賑やかな色づかいが特徴的で、大陸との関係という点において興味深く感じられます。



サハリンアイヌ、北海道アイヌの人びとの作品は、隣り合う空間でご紹介しています。





つづいてウイルタです。ウイルタの人びとの作品には、渦巻きを向かい合わせに並べて、ハートのようにみえるかたちが特徴的です。こちらは大きなテーブルクロス。



落ち着いたトーンのところどころに鮮やかな色で双葉のようなかたちが刺繍であらわされ、アクセントを添えています。丁寧にほどこされた刺繍はとても穏やかな雰囲気です。




こちらはトナカイ皮に絹糸でウイルタ文様を刺繍した皿敷きとお財布。
日露戦争講和条約以降、第二次世界大戦まで日本領だった南樺太では、敷香(現・ポロナイスク)郊外の「オタスの杜」において、ウイルタやニブフの人びとが、日本人観光客向けのお土産品としてこうした品々を制作しました。なかには、函館出身の画家・木村捷司(1905-1991年)が1938年に収集した品も含まれています。




佐藤チヨさんが手がけたバッグには、犬とトナカイが何ともいいお顔で、またその下には、南樺太の地形(西の方角を上にした向き)とお魚が刺繍されています。もう一方の面には、同じ青い糸で、先ほどの皿敷きと同様の文様が刺繍されています。




左の黒い衣服は北川アイ子さん(1928-2007年)の作。北川さんは、かつて網走にひらかれていた資料館ジャッカ・ドフニの初代館長をつとめたダーヒンニェニ・ゲンダーヌさんの義妹にあたります。網走に移住してから、市内でウイルタ刺繍の普及に貢献されました。
右のピンク色の衣服は、北川さんのお母さんが手がけ、北川さんが生前、身に着けていたそうです。




右開きのスタイルや裾周りの金属の飾りなど、民族伝統の衣服の形式をもとにしています。淡い色調や繊細な素材と刺繍、丸みを帯びた襟のかたちなど、ひときわ愛らしい印象です。





ニブフの人びとの作品にも、オタスでつくられた皿敷きや財布が含まれています。ウイルタの人びとの作品と、互いによく似通っています。




〈縫い方見本〉は言語学者・服部健博士の旧蔵資料。1941年頃にニブフの作り手が縫いあらわしたもので、白い木綿布に赤い糸で15種類のステッチを例示しています。なかにはウイルタや次回ご紹介するアムール流域の民族でも使われているステッチもみられます。




右開きの伝統的な形式に、細やかな刺繍をほどこしたニブフの衣服。



よくみると、左の衣服ではデニム生地やリボンも用いられています。受け継がれてきた伝統のうちに、新しい素材やスタイルを巧みに採り入れる柔軟な感性が、北方民族の人びとの作品に共通して息づいているように感じられます。



次回はロシア、カムチャッカ地方とアムール川流域に暮らす人びとの作品をご紹介します。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)